運送業の標準的な運賃とは?運賃交渉・荷役料金・適正な運賃収受のポイントを行政書士が解説
「燃料費や人件費が上がっているのに、運賃を値上げできない」
「荷待ちや荷役作業が発生しても、追加料金を請求できていない」
「荷主との運賃交渉をどのように進めればよいかわからない」
このような悩みを抱えている運送会社の経営者様も多いのではないでしょうか。
トラック運送業を安定して継続するためには、燃料費、人件費、車両費、高速道路料金などの必要経費を把握し、適正な運賃・料金を収受することが重要です。
そこで活用したいのが、国土交通省が告示する「標準的な運賃」です。
この記事では、標準的な運賃の概要、荷主との交渉方法、荷役料金や燃料サーチャージの考え方について解説します。
1.運送業の標準的な運賃とは?
標準的な運賃とは、トラック運送事業者が法令を遵守し、事業を持続的に運営するための参考となる運賃です。
トラック運送業では、荷主に対する交渉力の弱さや、ドライバーの労働条件の改善などが課題となってきました。こうした背景から、貨物自動車運送事業法の改正により、標準的な運賃の告示制度が設けられました。
2024年3月には、燃料費などの上昇を踏まえて運賃水準が平均8%引き上げられ、荷待ち・荷役作業などの対価についても見直しが行われました。
ただし、標準的な運賃は、すべての取引に一律で適用される法定価格ではありません。実際の運賃は、輸送条件や契約内容などを踏まえて荷主と運送事業者が協議して決定します。
標準的な運賃は、自社の適正な運賃を検討し、交渉の根拠を示すための重要な参考資料です。
2.標準的な運賃を活用するメリット
標準的な運賃を活用することで、次のようなメリットが期待できます。
① 運賃交渉の根拠を示せる
「経費が上がったので値上げしてください」と伝えるだけでは、荷主の理解を得られないことがあります。
標準的な運賃や自社の原価計算資料を活用すれば、必要な運賃水準について客観的な根拠を示しやすくなります。
② 必要な経費を見直せる
運送事業では、燃料費だけでなく、人件費、車両購入費、修繕費、保険料、高速道路料金など、さまざまな費用が発生します。
これらの経費を整理することで、現在の運賃で利益を確保できているかを確認できます。
③ ドライバーの待遇改善につなげられる
適正な運賃を収受できれば、人件費の確保や車両更新、安全対策などに必要な資金を確保しやすくなります。
運送会社の経営を安定させ、ドライバーの労働条件を改善するためにも、運賃の適正化は重要です。
3.荷主との運賃交渉を進める4つのポイント
① 自社の原価を把握する
まずは、運行に必要な費用を整理しましょう。
ドライバーの給与・社会保険料
燃料費・車両修繕費
車両購入費・リース料
保険料・税金
高速道路料金
事務所や車庫などの維持費
その他の事業運営費
車両別・運行別に収支を把握すると、採算が取れていない仕事を発見しやすくなります。
② 運賃の改定理由を資料にまとめる
運賃交渉では、値上げを希望する理由と金額の根拠を整理しておくことが大切です。
例えば、燃料費や人件費の変化、車両維持費の増加、運行に必要な時間などをまとめます。
自社の原価計算と標準的な運賃を組み合わせれば、荷主に説明しやすい交渉資料を作成できます。
③ 運賃と料金を分けて整理する
運送業務に関連する費用には、基本となる運賃のほか、荷待ち時間料、積込料・取卸料、高速道路料金などがあります。
どの費用が基本運賃に含まれ、どの費用が別途発生するのかを整理し、契約内容を明確にしましょう。
④ 定期的に運賃を見直す
燃料価格や人件費などは変動します。一度運賃を決めたら終わりではなく、経費の変化に応じて定期的に見直すことが重要です。
4.荷待ち時間・荷役作業の料金を適正に収受する
運送会社では、荷物を運ぶこと以外にも、待機や荷積み・荷卸しなどの作業が発生する場合があります。
こうした業務に対して適切な対価を収受できていないと、ドライバーの負担が増えるだけでなく、実質的な採算も悪化します。
荷待ち時間料
荷主や物流施設の都合で長時間待機する場合は、発生した時間や原因を記録し、契約内容に応じて料金を協議しましょう。
積込料・取卸料
手積み・手卸し、フォークリフト作業など、実際に行っている作業内容を整理し、作業に見合った料金を検討します。
契約内容の明確化
運賃に含まれる業務と、別途料金が発生する業務を契約書などで明確にしておくことが重要です。
国土交通省は、標準的な運賃に関する資料で、荷待ち・荷役作業などの対価についても考え方を示しています。自社の取引条件と照らし合わせて確認しましょう。
5.燃料サーチャージとは?
燃料サーチャージとは、燃料価格の変動による負担を運賃に反映させるための仕組みです。
燃料価格が上昇すると、運送会社の利益は圧迫されます。燃料費の上昇分を運賃に反映する方法として、燃料サーチャージの導入を荷主と協議することが考えられます。
導入を検討する際は、次の点を整理しましょう。
基準となる燃料価格
燃料価格の変動を反映する条件
サーチャージの計算方法
適用開始時期や見直し時期
荷主との合意内容
燃料サーチャージは自動的に支払われるものではありません。算定方法や適用条件について、荷主との協議と合意が必要です。
6.標準的な運賃に関する手続き上の注意点
標準的な運賃を参考に自社の運賃・料金を設定する場合は、貨物自動車運送事業法に基づく運賃・料金の設定や届出についても確認しましょう。
標準的な運賃の届出と、事業者が実際に設定する運賃・料金に関する届出は、同じものではありません。
自社の運賃・料金の設定や変更を行う場合は、適用される手続き、届出の要否、提出先などを運輸支局に確認することが大切です。
また、契約条件や取引内容によっては、運送関係法令以外の取引適正化に関する法令が関係する場合もあります。個別の取引については、契約内容を確認したうえで適切に対応しましょう。
7.標準的な運賃に関するよくある質問
Q1.標準的な運賃どおりの金額を必ず請求できますか?
標準的な運賃は、すべての取引に一律に適用される法定価格ではありません。実際の運賃は、輸送条件や契約内容などを踏まえて協議する必要があります。ただし、運賃交渉の根拠資料として活用できます。
Q2.荷待ち時間料や荷役料金は、運賃と別に請求できますか?
契約内容や作業条件によります。荷待ちや荷役作業の内容、発生時間、料金の取扱いを整理し、荷主と協議することが重要です。契約時に運賃と付帯業務の料金を明確にしておきましょう。
Q3.燃料費が上昇した場合は、どう対応すればよいですか?
燃料費の変化を把握し、運行ごとの原価や収支を確認したうえで、運賃改定や燃料サーチャージについて荷主と協議する方法があります。価格変動の資料や計算根拠を準備しておくと説明しやすくなります。
Q4.小規模な運送会社でも原価計算は必要ですか?
小規模な会社でも原価計算は重要です。車両ごとの収支や人件費、燃料費などを把握することで、採算の悪い仕事を見直し、適正な運賃を検討しやすくなります。
8.まとめ|標準的な運賃を活用し、持続可能な運送事業へ
運送会社が安定して事業を継続するためには、必要な経費を把握し、適正な運賃・料金を収受することが重要です。
今回のポイントは次のとおりです。
標準的な運賃は、運賃交渉の参考となる指標
自社の原価を把握し、交渉の根拠を準備する
荷待ち時間料や荷役料金を整理し、適切な対価を協議する
燃料サーチャージの導入や運賃の定期的な見直しを検討する
運賃・料金の設定や変更に関する手続きも確認する
運賃交渉は、単に値上げを求めることではありません。必要な経費を適切に収受し、安全で持続可能な運送事業を実現するための取り組みです。
運送業の手続き・巡回指導対策は行政書士福原総合事務所へ
行政書士福原総合事務所では、運送業許可、事業報告書・事業実績報告書の作成、巡回指導サポート、各種変更手続きなど、運送事業者様の業務をサポートしています。
ドライバーから運行管理者、運送会社役員を経て行政書士となった経験を活かし、運送事業者様の立場に寄り添った支援を心がけています。
運送業の許認可や必要書類の管理、巡回指導に向けた準備などでお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
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