運送業の荷待ち時間とは?労働時間との関係・記録方法・長時間化を防ぐ対策を行政書士が解説
運送会社の経営者や運行管理者の皆様は、荷主の倉庫や配送センターで、ドライバーが長時間待機してしまうことに悩んでいませんか?
荷待ち時間が長くなると、ドライバーの拘束時間が延び、労働時間の管理や運行計画にも影響します。また、荷待ち時間や荷役作業等については、法令に基づく記録が必要となる場合があります。
2025年4月からは、荷待ち時間・荷役作業等の記録義務の対象が、従来の一定の大型車両からすべての車両へ拡大されています。
この記事では、運送業における荷待ち時間の基本、労働時間との関係、記録方法、荷待ち時間を削減するための対策について解説します。
1.運送業における荷待ち時間とは?
荷待ち時間とは、トラックが集荷先や配送先などに到着してから、荷積み・荷卸しなどの作業を開始するまでに待機する時間をいいます。
例えば、午前9時に配送センターへ到着したものの、荷卸しの順番が回ってこず、午前11時から作業を開始した場合、状況に応じて2時間の荷待ち時間が発生したことになります。
荷待ち時間が発生する主な原因には、次のようなものがあります。
荷主や物流施設の入出庫予約が集中している
荷物の準備が間に合っていない
荷卸し場所やバースが空いていない
受付や検品に時間がかかっている
到着時刻や作業開始時刻の調整が十分でない
荷待ち時間は、ドライバー個人の努力だけでは解消できないことも少なくありません。運送会社だけでなく、荷主や物流施設と協力して改善することが重要です。
2.荷待ち時間は労働時間に含まれる?
荷待ち時間の管理では、労働時間と拘束時間の違いを理解しておく必要があります。
労働時間に該当するかは、待機中の状況で判断する
荷待ち時間であっても、ドライバーが会社や荷主の指示に従い、自由に利用できない状態で待機している場合には、労働時間に該当する可能性があります。
一方、業務から完全に解放され、自由に利用できる休憩時間と認められる場合は、労働時間に該当しないことがあります。
したがって、単に「トラックを運転していない時間だから休憩」と扱うことは適切ではありません。
待機中に場所を離れられるか、作業指示があるか、呼び出しに対応する必要があるかなど、実際の状況を踏まえて判断する必要があります。
拘束時間にも注意する
拘束時間は、原則として始業から終業までの時間で、労働時間と休憩時間を合わせたものです。
労働時間に該当しない待機時間であっても、会社の拘束下にある時間であれば、拘束時間に含まれる可能性があります。
荷待ち時間が長引けば、拘束時間の上限や休息期間の確保にも影響するため、運行管理者は実際の待機状況を把握しなければなりません。
トラック運転者には、2024年4月から改正後の改善基準告示が適用されています。荷待ち時間を含めた運行全体を確認し、基準を守れる運行計画を作成することが重要です。
3.荷待ち時間・荷役作業等の記録義務とは?
国土交通省は、荷待ち時間などの実態把握と削減を進めるため、トラック運送事業者に業務記録の作成を求めています。
2025年4月から記録対象はすべての車両に拡大
従来、記録義務の対象は、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両でした。
しかし、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正により、2025年4月1日から対象がすべての車両に拡大されています。
荷待ち時間の記録
荷主の都合により、集荷・配達地点で30分以上待機した場合は、原則として、次の事項を乗務記録に記載する必要があります。
集貨地点等の名称・場所
集貨地点等への到着時刻・出発時刻
積込み・取卸しの開始時刻・終了時刻
荷待ち時間の記録は、待機が発生した原因や時間を把握し、改善策を検討するためにも役立ちます。
荷役作業等の記録
荷役作業等を行った場合は、作業の開始・終了時刻や内容などを記録します。また、荷主の確認が得られたかどうかについても記録対象となります。
対象となる作業には、荷積み・荷卸しのほか、契約や業務内容に応じて、検品、仕分け、棚入れ・棚出しなどの附帯作業が含まれる場合があります。
なお、荷役作業等の記録については、契約書に作業内容が明記されている場合の記録対象の考え方など、具体的な取扱いに注意が必要です。
記録方法や詳細な対象範囲については、国土交通省の公式案内を確認してください。
参考:国土交通省「乗務記録の記載対象となる荷待時間・荷役作業等について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr4_000026.html
4.荷待ち時間の記録方法と管理のポイント
荷待ち時間を正しく管理するには、ドライバー任せにせず、会社として記録方法を統一することが大切です。
① 到着時刻と作業開始時刻を記録する
荷主や物流施設への到着時刻、受付時刻、荷積み・荷卸しの開始時刻などを、実際の時刻に基づいて記録します。
後から記憶だけで記入すると、正確性が損なわれるおそれがあります。運転日報や業務記録、デジタルタコグラフなどを活用して、記録漏れを防ぎましょう。
② 荷待ちの原因を記録する
待機時間だけでなく、その原因も把握すると改善につながります。
例えば、次のような項目を社内で整理するとよいでしょう。
荷主側の荷物準備の遅れ
受付や検品の混雑
予約時刻と実際の作業開始時刻のずれ
バース不足や車両の集中
運送会社側の到着時刻のずれ
原因を分類することで、運送会社が対応できる問題と、荷主などとの協議が必要な問題を区別しやすくなります。
③ 記録を保存し、定期的に確認する
乗務記録は、法令に従って作成・保存する必要があります。荷待ち時間や荷役作業等の記録についても、最低1年間の保存が必要となるため、記録の保存漏れがないよう管理しましょう。
月ごとに荷主別・配送先別の待機時間を集計すれば、長時間の荷待ちが発生している場所や、改善が必要な運行を把握しやすくなります。
5.荷待ち時間を削減するための対策
荷待ち時間の削減は、ドライバーの負担軽減だけでなく、運送会社の生産性向上にもつながります。
① 荷主と到着時刻・作業時間を調整する
荷主や物流施設と協議し、到着時刻の分散や入出庫予約の活用を進めましょう。
車両が同じ時間帯に集中する状況を改善できれば、待機時間の削減が期待できます。
② 荷待ち時間を数値で把握する
「いつも待たされる」という感覚だけでは、具体的な改善策を立てにくくなります。
記録を集計し、荷主別・曜日別・時間帯別に荷待ち時間を比較することで、優先して改善すべき場所を見つけられます。
③ 荷役作業の分担や契約内容を確認する
運送契約に含まれる業務と、追加で発生している荷役・附帯作業を整理しましょう。
契約に明記されていない作業が発生している場合は、荷主と作業範囲や料金について協議することが大切です。待機時間料や積込料・取卸料などの適正な収受を検討する際にも、記録が根拠になります。
④ 運行計画と労働時間管理を連動させる
荷待ち時間が発生することを想定せずに運行計画を作成すると、予定どおりに運行できなくなり、拘束時間や休息期間にも影響するおそれがあります。
過去の記録をもとに待機時間を見積もり、無理のない運行計画を作成しましょう。長時間の荷待ちが繰り返される場合は、荷主との調整も含めた改善が必要です。
6.荷待ち時間に関するよくある質問
Q1.荷待ち時間の記録は、すべてのトラックで必要ですか?
2025年4月1日から、荷待ち時間・荷役作業等の記録義務の対象はすべての車両に拡大されています。ただし、具体的な記録対象や記載事項は、荷待ちの状況や作業内容などによって異なります。
Q2.荷待ち時間は、必ず労働時間になりますか?
必ずしも一律ではありません。待機中に業務から解放されているか、指示への対応が必要かなど、実際の状況に応じて判断します。自由に利用できない待機時間は、労働時間に該当する可能性があります。
Q3.荷待ち時間の記録は何年間保存しますか?
荷待ち時間・荷役作業等を含む乗務記録については、法令に基づく保存が必要で、最低1年間の保存が求められます。記録の作成だけでなく、保存方法や確認体制も整えておきましょう。
Q4.荷主が荷待ち時間の削減に協力してくれない場合は、どうすればよいですか?
まずは記録をもとに、発生している時間や原因を具体的に整理し、荷主や元請事業者と改善策を協議しましょう。待機時間や附帯作業の実態を客観的に示すことが、改善交渉の第一歩になります。
7.まとめ|荷待ち時間の記録と改善が運送会社の労務管理を支える
荷待ち時間は、ドライバーの労働時間や拘束時間、運行計画に影響する重要な管理項目です。
運送会社が取り組むべきポイントは、次の4つです。
荷待ち時間・荷役作業等を正確に記録する
待機中の状況を踏まえて労働時間を適切に管理する
記録を集計し、荷主別・配送先別の課題を把握する
荷主との協議や運行計画の見直しによって、荷待ち時間の削減を進める
記録を作成するだけで終わらせず、実際の改善につなげることが大切です。日々の業務記録を活用して、適正な労務管理と効率的な運行体制を目指しましょう。
運送業の手続き・巡回指導対策は行政書士福原総合事務所へ
行政書士福原総合事務所では、運送業許可、事業報告書・事業実績報告書の作成、巡回指導サポート、各種変更手続きなど、運送事業者様の業務をサポートしています。
ドライバーから運行管理者、運送会社役員を経て行政書士となった経験を活かし、運送事業者様の立場に寄り添った支援を心がけています。
「巡回指導に向けて書類を確認したい」「業務記録の管理方法を見直したい」「運送業の手続きについて相談したい」といったお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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