運送業の労働時間管理とは?時間外労働の上限規制と運送会社が注意すべきポイントを行政書士が解説

query_builder 2026/10/14
コラム
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運送会社を経営するうえで、運転者の労働時間管理は非常に重要です。

2024年4月から、トラック運転者にも時間外労働の上限規制が適用され、拘束時間や休息期間などを定める改善基準告示も改正されました。

運送事業者様の中には、

  • トラック運転者の時間外労働は年間何時間まで認められる?

  • 36協定は必ず締結しなければならない?

  • 労働時間と拘束時間は何が違う?

  • 改善基準告示を守っていれば、労働時間の管理は十分?

  • 運転日報や勤怠記録はどのように管理すればよい?

といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

労働時間管理が適切でない場合、法令違反につながるだけでなく、運転者の健康や安全運行にも影響するおそれがあります。

今回は、一般貨物自動車運送事業者が知っておきたい時間外労働の上限規制、36協定、改善基準告示との違い、実務上の管理方法について、行政書士が分かりやすく解説します。

1.運送業の労働時間管理が重要な理由

トラック運転者は、長時間の運転、荷積み・荷卸し、荷待ち、深夜・早朝の運行など、さまざまな負担を抱えています。

そのため、運送会社には、労働時間を適切に把握し、長時間労働を防止するための管理が求められます。

労働時間管理が不十分な場合、次のような問題が発生する可能性があります。

  • 時間外労働の上限規制に違反する

  • 36協定の範囲を超えて時間外労働をさせてしまう

  • 改善基準告示に定められた拘束時間や休息期間を守れない

  • 割増賃金の計算に誤りが生じる

  • 運転者の疲労が蓄積し、事故のリスクが高まる

  • 労働基準監督署の監督指導などで問題を指摘される

運送会社では、配送を完了させることだけでなく、運転者が法令に沿って勤務できる体制を整えることが重要です。

2.トラック運転者の時間外労働は年960時間が上限

2024年4月1日から、トラック運転者にも時間外労働の上限規制が適用されています。

自動車運転の業務については、臨時的な特別の事情がある場合に特別条項付きの36協定を締結しても、時間外労働は原則として年間960時間以内とする必要があります。

ここで注意したいのは、年間960時間という上限は、会社が自由に時間外労働をさせてよい時間数ではないということです。

時間外労働をさせる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出るなど、必要な手続きを行わなければなりません。

また、時間外労働の上限規制と、改善基準告示に定められた拘束時間などの基準は別々に確認する必要があります。

年960時間以内であっても、拘束時間や休息期間などの基準に違反する勤務が認められるわけではありません。

3.36協定とは?運送会社が確認すべきポイント

36協定とは、労働基準法第36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定」です。

法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、原則として36協定の締結と届出が必要です。

法定労働時間は、原則として次のとおりです。

項目原則
1日の法定労働時間8時間
1週間の法定労働時間40時間
時間外・休日労働をさせる場合原則として36協定が必要
トラック運転者の時間外労働特別条項を設ける場合でも年960時間が上限

36協定を締結していないのに時間外労働をさせたり、協定で定めた範囲を超えて労働させたりすることは問題となります。

運送会社では、次の点を確認しましょう。

  • 36協定を締結しているか

  • 労働基準監督署への届出を行っているか

  • 協定の有効期間が切れていないか

  • 対象となる労働者や業務が適切に定められているか

  • 協定で定めた時間数や手続きに沿って管理しているか

36協定は、一度作成すればその後は確認しなくてよいというものではありません。有効期間や勤務実態を定期的に確認することが大切です。

4.一般の労働者とトラック運転者では上限規制の扱いが異なる

時間外労働の上限規制については、一般の労働者と自動車運転の業務に従事する労働者で、適用されるルールが異なる部分があります。

一般の労働者には、原則として月45時間・年360時間の時間外労働の上限が設けられています。

一方、自動車運転の業務については、特別条項付き36協定を締結する場合の時間外労働の上限が年960時間となる特例が適用されます。

また、一般の労働者に適用される月100時間未満・複数月平均80時間以内などの規制についても、自動車運転の業務では取扱いが異なります。

ただし、これは長時間労働を無制限に認めるという意味ではありません。

トラック運転者については、時間外労働の上限に加えて、改善基準告示による拘束時間や休息期間などの基準も守る必要があります。

「運転者は年960時間まで残業できる」とだけ理解するのではなく、労働時間規制と改善基準告示を合わせて確認することが重要です。

5.労働時間と拘束時間の違い

運送会社の労務管理で混同しやすいのが、「労働時間」と「拘束時間」です。

労働時間とは?

労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

運転、荷積み、荷卸し、会社の指示による作業などが該当します。

荷待ち時間についても、労働から解放されているとはいえず、使用者の指揮命令下にある場合には労働時間に該当することがあります。

拘束時間とは?

拘束時間は、原則として始業から終業までの時間です。

労働時間だけでなく、休憩時間なども含みます。

例えば、始業から終業まで12時間あり、そのうち休憩時間が1時間だった場合、労働時間は実態に応じて計算しますが、拘束時間は12時間です。

項目主な意味
労働時間使用者の指揮命令下にある時間
拘束時間始業から終業までの時間
休憩時間労働から解放されている時間
休息期間勤務終了から次の勤務開始までの、使用者の拘束を受けない期間

労働時間と拘束時間は同じものではありません。

運送会社では、勤怠管理と運行管理の両方の観点から、それぞれを適切に把握する必要があります。

6.改善基準告示も別に守らなければならない

トラック運転者には、労働時間の上限規制に加えて、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、いわゆる改善基準告示が適用されます。

改善基準告示では、拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などについて基準が定められています。

2024年4月以降のトラック運転者の主な基準は、次のとおりです。

項目基本的な基準
1日の拘束時間原則13時間以内
1か月の拘束時間原則284時間以内
1年間の拘束時間原則3,300時間以内
休息期間継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
2日平均の1日当たりの運転時間9時間以内
2週間平均の1週間当たりの運転時間44時間以内
連続運転時間4時間を超えないことが原則

一定の要件を満たす場合には、拘束時間などについて特例が認められることがあります。

そのため、自社の運行内容に応じて、原則の基準と特例の要件を確認することが大切です。

詳しい拘束時間・休息期間の管理方法については、第21記事「運送業の拘束時間・休息期間とは?改善基準告示のルールと管理方法を行政書士が解説」もあわせてご覧ください。

7.運転者の労働時間はどのように把握する?

運送会社は、運転者の労働時間を適切に把握し、時間外労働の状況を管理する必要があります。

実務では、次のような資料を活用します。

  • タイムカードや勤怠管理システム

  • 運転日報・乗務記録

  • 点呼記録

  • 配車表・運行計画

  • 荷積み・荷卸しや荷待ちの記録

  • 給与計算資料

ただし、これらの資料を作成しているだけでは十分ではありません。

記録された時刻が実際の勤務状況と一致しているか、労働時間が正確に把握されているかを確認する必要があります。

例えば、運転日報には終業時刻が午後7時と記録されているのに、勤怠記録では午後5時に退勤したことになっている場合、記録の整合性を確認しなければなりません。

運行記録と勤怠記録を照合し、実際の勤務状況を正しく把握することが重要です。

8.荷待ち時間や荷役時間も適切に管理する

運送会社では、配送先での荷待ちや荷積み・荷卸しに時間がかかることがあります。

こうした時間は、実際の状況によって労働時間に該当する場合があります。

例えば、運転者が荷主の指示を待ち、自由にその場を離れられない場合などは、単に「待機していた時間」として労働時間から除外できるとは限りません。

荷待ち時間が長い状態が続くと、時間外労働が増加するだけでなく、拘束時間や休息期間にも影響する可能性があります。

運送会社では、次の点を確認しましょう。

  • 荷主先での待機時間を把握しているか

  • 荷積み・荷卸しの開始時刻や終了時刻を記録しているか

  • 待機時間が長い配送先を把握しているか

  • 荷主や取引先と時間短縮について協議しているか

  • 待機が長引いた場合の運行計画を見直しているか

長時間労働を防止するためには、運転者の勤務管理だけでなく、荷主や取引先との取引環境を見直すことも重要です。

9.時間外労働と割増賃金の管理にも注意する

労働時間を正しく把握することは、給与計算にも直結します。

法定労働時間を超える時間外労働や、法定休日の労働、深夜労働については、労働基準法に基づく割増賃金の支払いが必要となる場合があります。

そのため、運送会社では、勤怠記録と給与計算資料を照合し、時間外労働などが適切に計算されているか確認することが大切です。

特に、次のようなケースには注意しましょう。

  • 運転日報と勤怠記録の時間が一致していない

  • 荷待ち時間を適切に把握していない

  • 深夜労働の時間が正しく集計されていない

  • 時間外労働の計算方法が明確でない

  • 固定残業代を支払っているが、必要な確認をしていない

固定残業代を導入している場合でも、実際の時間外労働などを把握し、法令に沿った賃金計算を行う必要があります。

労働時間管理と給与計算は、切り離さずに確認しましょう。

10.労働時間管理で運行管理者が注意したいポイント

運行管理者は、安全運行を確保するために、運転者の勤務状況や運行計画を確認する立場にあります。

労働時間の管理についても、経営者や労務担当者と連携しながら、無理のない運行体制を整えることが大切です。

具体的には、次のような点を意識しましょう。

① 配車前に勤務状況を確認する

前の勤務の終了時刻や休息期間を確認し、次の運行が無理なく実施できるか検討します。

② 運行計画に余裕を持たせる

走行距離だけでなく、渋滞、荷待ち、荷役、休憩などを考慮して計画を作成します。

③ 実際の勤務実績を確認する

予定どおりに運行できたかだけでなく、拘束時間や労働時間が適切だったか確認します。

④ 長時間労働の原因を分析する

特定の運転者や配送先に長時間労働が集中している場合には、配車や配送条件などを見直します。

⑤ 疲労や体調不良にも配慮する

時間上の基準を満たしていても、運転者の健康状態に問題がある場合には、安全を優先した判断が必要です。

労働時間管理は、経営者だけ、あるいは運行管理者だけで完結するものではありません。会社全体で情報を共有し、継続的に改善していきましょう。

11.労働時間管理のチェックリスト

自社の管理体制を見直す際には、次の項目を確認しましょう。

□ 36協定を締結し、必要な届出を行っている
□ 36協定の有効期間を管理している
□ 運転者の労働時間を適切に把握している
□ 時間外労働の状況を定期的に確認している
□ 時間外労働が年960時間の上限を超えないよう管理している
□ 改善基準告示に定める拘束時間を確認している
□ 休息期間を適切に確保している
□ 運転時間や連続運転時間を確認している
□ 運転日報と勤怠記録を照合している
□ 荷待ち時間や荷役時間を把握している
□ 割増賃金が適切に計算されているか確認している
□ 長時間労働の原因を分析し、必要な改善を行っている

すべての項目を一度に見直すのが難しい場合でも、まずは36協定の有効期間、時間外労働の実績、拘束時間、休息期間から確認するとよいでしょう。


12.労働時間管理に関するよくある質問

Q1.トラック運転者は年間960時間まで残業させてもよいのですか?

年960時間は、特別条項付き36協定を締結する場合の時間外労働の上限です。上限いっぱいまで働かせることを推奨するものではありません。

36協定の要件を満たすことに加え、改善基準告示やその他の労働関係法令を守る必要があります。

Q2.36協定を締結していれば、長時間労働をさせてもよいですか?

いいえ。36協定を締結していても、協定で定めた範囲や法令上の上限を守らなければなりません。

また、改善基準告示に定められた拘束時間や休息期間なども別に確認する必要があります。

Q3.改善基準告示を守っていれば、時間外労働の管理は不要ですか?

いいえ。改善基準告示と時間外労働の上限規制は別のルールです。

拘束時間や休息期間を守っていても、時間外労働や割増賃金の管理が適切であるとは限りません。それぞれの基準に沿って管理しましょう。

Q4.運転日報があれば、労働時間管理は十分ですか?

運転日報は重要な資料ですが、それだけで十分とは限りません。

勤怠記録、点呼記録、配車表などと照合し、実際の勤務状況を正しく把握することが大切です。

Q5.荷待ち時間は労働時間に含まれますか?

実際の状況によります。使用者の指揮命令下にあり、自由に利用できない時間などは労働時間に該当する場合があります。

荷主先での待機だからという理由だけで、一律に労働時間から除外しないよう注意しましょう。

13.まとめ|労働時間と拘束時間を分けて管理しましょう

運送会社では、運転者の労働時間を適切に把握し、時間外労働の上限規制と改善基準告示の両方を守ることが重要です。

今回のポイントは、次のとおりです。

  • トラック運転者の時間外労働は、特別条項付き36協定を締結する場合でも原則として年960時間が上限

  • 時間外労働や休日労働をさせる場合には、原則として36協定が必要

  • 労働時間と拘束時間は異なる

  • 改善基準告示の拘束時間・休息期間・運転時間なども別に管理する

  • 運転日報、勤怠記録、点呼記録などを照合する

  • 荷待ちや荷役の実態も把握し、長時間労働の原因を改善する

労働時間管理は、書類を作成するだけでなく、実際の勤務状況を把握して改善につなげることが大切です。

運転者の健康と安全を守り、安定した事業運営を続けるためにも、自社の労務管理と運行管理を定期的に見直しましょう。

行政書士福原総合事務所では運送事業者様をサポートしています

行政書士福原総合事務所では、一般貨物自動車運送事業許可をはじめ、各種変更手続き、事業報告書・事業実績報告書の作成、巡回指導サポートなど、運送事業者様を幅広くサポートしています。

代表者自身が、

ドライバー → 運行管理者 → 運送会社役員 → 行政書士

という運送業の現場経験を持っています。

書類上の手続きだけでなく、運送会社の実務を理解したうえで、事業者様に寄り添ったサポートを心がけています。

「巡回指導に向けて運行管理関係の書類を整理したい」

「点呼記録や運転日報の管理を見直したい」

「運送業の許可や変更手続きについて相談したい」

といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

参考資料

※本記事は一般的な制度の解説です。実際の労務管理では、最新の法令、通達、行政機関の資料を確認し、自社の勤務実態に応じて対応してください。

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