運送業の健康診断とは?実施時期・深夜業・未受診のリスク・運行管理者の対応を行政書士が解説
一般貨物自動車運送事業を営む場合、運転者の健康管理は「従業員の福利厚生」というだけではありません。
事業用自動車を安全に運行するためには、運転者の健康状態を適切に把握し、疾病や疲労などによって安全な運転ができないおそれがある場合には、乗務させないための管理が必要です。
運送会社では、
「健康診断は年1回受けさせればいい?」
「深夜・早朝勤務がある運転者は年2回必要?」
「健康診断を受けていない運転者を乗務させても大丈夫?」
「健康診断で異常が見つかった場合、会社はどう対応する?」
「巡回指導では健康診断も確認される?」
など、健康管理について疑問を持つ事業者様も少なくありません。
今回は、一般貨物自動車運送事業者が知っておきたい運転者の健康診断と健康管理のポイントについて、行政書士が分かりやすく解説します。
1.運送業では運転者の健康管理が重要
トラックドライバーは、長時間の運転、早朝・夜間の運行、荷役作業など、身体的・精神的な負担がかかる仕事です。
そのため、運転者の健康状態を適切に把握することは、交通事故を防止するうえでも重要です。
国土交通省も、事業用自動車の運転者について、健康診断による健康状態の把握や、疾病・疲労などによって安全な運転ができないおそれのある乗務員を乗務させないことなどを示しています。
つまり健康診断は、
「会社から言われたから受けるもの」ではなく、安全運行を維持するための重要な安全管理の一つ
と考える必要があります。
2.運送業の健康診断は「年1回」が基本
通常の定期健康診断については、労働安全衛生規則第44条により、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回実施することが原則となっています。
そのため、一般的な運転者については、
雇入時の健康診断
+
1年以内ごとに1回の定期健康診断
という形で管理することになります。
しかし、運送業ではここで注意が必要です。
トラック運送では、深夜・早朝の運行が行われることがあります。
この場合、勤務実態によっては、通常の年1回の健康診断ではなく、6か月以内ごとに1回、つまり年2回の健康診断が必要となる場合があります。
3.深夜業に常時従事する運転者は「6か月以内ごとに1回」
労働安全衛生規則第45条では、一定の特定業務に常時従事する労働者について、配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期健康診断を実施することが定められています。
この対象には、深夜業を含む業務に常時従事する労働者が含まれます。
労働安全衛生法上の「深夜業」は、原則として、
午後10時から午前5時まで
の時間帯に行われる業務をいいます。
したがって、運送会社で深夜帯の運行に常時従事する運転者については、
6か月以内ごとに1回
の健康診断が必要となり、結果として年2回程度の健康診断を実施することになります。
ここは運送会社の健康管理で非常に重要なポイントです。
4.「早朝勤務がある=必ず年2回」ではない
ここは誤解しやすい部分です。
「早朝勤務がある運送会社だから、全員が年2回の健康診断」
というわけではありません。
重要なのは、深夜業に常時従事しているかどうかです。
例えば、
ケース1
午前4時から勤務することが継続的にある。
→ 午前4時は深夜業の時間帯に該当するため、勤務実態によっては6か月以内ごとの健康診断の対象となります。
ケース2
午前6時から勤務することが多い。
→ 午前6時は原則として深夜業の時間帯ではありません。
したがって、単に「朝が早い」という理由だけで、直ちに年2回の健康診断が必要になるわけではありません。
深夜業に常時従事しているかどうかを、実際の勤務状況から確認することが重要です。
5.深夜業の運転者は健康診断の管理を別にする
運送会社では、運転者全員を同じ健康診断スケジュールで管理するのではなく、
通常勤務の運転者
と
深夜業に常時従事する運転者
を区分して管理すると分かりやすくなります。
例えば、
| 区分 | 健康診断の基本的な考え方 |
|---|---|
| 通常勤務の運転者 | 1年以内ごとに1回 |
| 深夜業に常時従事する運転者 | 6か月以内ごとに1回 |
| 雇入時 | 雇入れ時健康診断を確認 |
| 深夜業への配置替え | 配置替えの際の健康診断を確認 |
深夜業に常時従事する労働者については、6か月以内ごとの健康診断が必要とされています。
6.運送会社では「深夜・早朝運行」を把握する
運送会社の健康診断管理では、単純に「ドライバーだから年1回」と考えるのではなく、実際の勤務状況を確認することが大切です。
例えば、
午前0時から運行する
午前2時から運行する
午前4時から運行する
深夜に出庫する
夜間配送を担当する
長距離輸送で深夜帯を走行する
といった勤務が常態化している場合には、深夜業への該当性を確認する必要があります。
特に長距離輸送を行っている会社では、運行実態を確認せずに健康診断を年1回だけで管理しているケースがないか、注意が必要です。
7.健康診断を受けさせて終わりではない
健康診断で重要なのは、単に受診させることだけではありません。
健康診断によって健康上の問題が見つかった場合には、その後の対応も重要になります。
例えば、
血圧に問題がある
血糖値に異常がある
心電図に異常がある
睡眠や疲労に問題がある
医師から再検査を勧められている
といった場合です。
会社が医療行為を行うわけではありませんが、安全運行を確保するため、必要に応じて医師の診断や治療を受けるよう促し、運転者の健康状態を適切に把握することが重要です。
8.健康状態に問題がある運転者をそのまま乗務させない
運送会社が特に注意しなければならないのが、疾病や疲労などにより安全な運転ができないおそれがある運転者の乗務です。
健康診断で異常があった場合には、その内容や医師の意見等を踏まえ、安全に乗務できる状態なのかを適切に確認する必要があります。
また、健康診断とは別に、日々の点呼でも運転者の体調や疲労状態を確認することが重要です。
9.点呼でも運転者の健康状態を確認する
第11記事で解説した「点呼」は、運転者の健康状態を確認する重要な場面です。
健康診断による中長期的な健康管理と、点呼による日々の体調確認を組み合わせることが重要です。
例えば、
「今日は体調に問題ありませんか?」
「睡眠は十分に取れていますか?」
「疲れは残っていませんか?」
など、運転者の状態を確認します。
特に深夜・早朝勤務が多い運転者については、睡眠不足や疲労の蓄積にも注意しましょう。
10.健康診断と点呼を別々に考えない
重要健康診断と点呼は、それぞれ別の制度に見えるかもしれません。
しかし、運送会社の安全管理という視点では密接につながっています。
健康診断
↓
健康上のリスクを把握
↓
日々の点呼
↓
その日の体調・疲労状態を確認
↓
運行管理者による判断
↓
安全に乗務できる状態か確認
という流れです。
特に深夜・早朝運行がある会社では、健康診断の頻度と日々の健康状態の両方を管理することが重要です。
11.健康診断未受診は行政処分につながる可能性も
「健康診断を受けていないだけなら、大きな問題にはならない」と考えてはいけません。
国土交通省が公表している行政処分事例では、健康診断未受診が違反事項として認定され、行政処分につながった事例があります。
また、健康診断だけでなく、点呼、運転者台帳、指導監督、適性診断など、複数の運行管理上の違反が同時に認定されるケースもあります。
そのため、
健康診断の受診時期を会社として確実に管理する
ことが重要です。
12.健康診断の管理表を作る
健康診断の管理は、一覧表にすると分かりやすくなります。
例えば、
| 管理項目 | 内容 |
|---|---|
| 運転者氏名 | 氏名 |
| 入社年月日 | 雇入れ時期 |
| 深夜業の有無 | 深夜勤務の実態 |
| 雇入時健康診断 | 実施日 |
| 第1回定期健康診断 | 実施日 |
| 第2回定期健康診断 | 実施日 |
| 次回受診予定 | 期限管理 |
| 再検査等 | 必要に応じて確認 |
| その他 | 医師の指示等 |
特に深夜業に常時従事する運転者については、6か月以内ごとの健康診断を忘れないよう、次回受診日を明確にしておくことが重要です。
13.健康診断と運転者台帳を連動させる
第9記事で解説した運転者台帳も、運転者管理の重要な資料です。
運送会社では、
運転者台帳
健康診断
適性診断
安全教育
点呼
などを別々に管理するのではなく、運転者ごとに関連付けて管理すると、管理漏れを防ぎやすくなります。
特に、
「この運転者は深夜業に従事している」
「次回健康診断は○月」
といった情報を一覧で把握できるようにしておくと便利です。
14.健康診断と適性診断の違い
第19記事で解説した「適性診断」と健康診断は、目的が異なります。
| 項目 | 健康診断 | 適性診断 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 健康状態の把握 | 運転特性の把握 |
| 主な対象 | 労働安全衛生法等に基づく対象者 | 初任・高齢・事故惹起運転者等 |
| 内容 | 身体の健康状態など | 運転行動・心理・生理的特性など |
| 活用 | 健康管理・安全運行 | 安全運転の指導 |
| 管理 | 受診時期・結果等 | 対象者・受診時期・結果等 |
どちらも安全運行を支える重要な管理項目です。
15.健康管理は安全教育にもつながる
第18記事で解説した安全教育・指導監督の中でも、運転者の健康管理は重要なテーマです。
運転者に対して、
睡眠不足を避ける
疲労をためない
定期的に健康診断を受ける
深夜業に従事する場合は適切な健康管理を行う
体調不良時には無理をして乗務しない
といった健康管理の重要性を理解してもらうことが大切です。
特に深夜・早朝運行がある会社では、健康診断だけでなく、睡眠・休養・疲労の管理も重要になります。
16.巡回指導に備えて健康管理を確認する
巡回指導や監査に備えるためにも、健康診断の管理状況を日頃から確認しておきましょう。
健康管理チェックリスト
□ 雇入時の健康診断を適切に管理している
□ 通常勤務の運転者は1年以内ごとに健康診断を受けている
□ 深夜業に常時従事する運転者を把握している
□ 深夜業に常時従事する運転者は6か月以内ごとに健康診断を受けている
□ 次回健康診断の期限を管理している
□ 健康診断未受診者がいないか確認している
□ 運転者の健康状態を適切に把握している
□ 点呼で疾病・疲労等を確認している
□ 体調不良の運転者を無理に乗務させていない
□ 適性診断と健康診断を適切に管理している
□ 安全教育でも健康管理の重要性を指導している
17.深夜・早朝運行がある会社は「年2回」を意識する
運送会社で特に注意したいのが、深夜・早朝運行を行っているにもかかわらず、健康診断を年1回だけで管理しているケースです。
原則として、午後10時から午前5時までの深夜業に常時従事する労働者については、6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。
そのため、深夜業に常時従事する運転者については、
第1回健康診断
↓
6か月以内
↓
第2回健康診断
↓
さらに6か月以内
というサイクルで管理することになります。
運行スケジュールが複雑な運送会社では、運転者ごとの勤務実態を確認したうえで、健康診断の対象者と受診時期を一覧化しておくと安心です。
18.まとめ|深夜・早朝運行がある運送会社は健康診断の頻度に注意
一般貨物自動車運送事業では、運転者の健康状態を適切に把握し、安全な運行につなげることが重要です。
通常の定期健康診断は、原則として1年以内ごとに1回です。
一方、午後10時から午前5時までの深夜業に常時従事する労働者については、労働安全衛生規則により、6か月以内ごとに1回の健康診断が必要となります。
つまり、運送会社では、
通常勤務の運転者 → 原則年1回
深夜業に常時従事する運転者 → 6か月以内ごと、年2回程度
という違いに注意する必要があります。
ただし、単に「早朝勤務がある」というだけで一律に年2回になるわけではありません。
実際に深夜業に常時従事しているか
を確認することが重要です。
また、健康診断は受診させて終わりではありません。
健康診断、点呼、適性診断、安全教育、運行管理を一体として考え、運転者が安全に乗務できる体制を整えることが重要です。
「自社の運転者は年1回でいいのか、年2回必要なのか分からない」
「深夜・早朝運行があるので健康診断の管理を見直したい」
「巡回指導に向けて運転者関係の書類を整理したい」
という場合には、早めに現在の管理体制を確認しておきましょう。
行政書士福原総合事務所では運送事業者様をサポートしています
行政書士福原総合事務所では、一般貨物自動車運送事業許可をはじめ、各種変更手続き、事業報告書・事業実績報告書の作成、巡回指導サポートなど、運送事業者様を幅広くサポートしています。
代表者自身が、
ドライバー → 運行管理者 → 運送会社役員 → 行政書士
という運送業の現場経験を持っています。
そのため、書類だけを見るのではなく、運送会社の実際の業務を理解したうえで、事業者様に寄り添ったサポートを行っています。
「健康管理体制を確認したい」
「深夜・早朝運行があるので健康診断の管理を見直したい」
「巡回指導に備えて書類を整理したい」
「点呼や運転者台帳など、運行管理全体を見直したい」
という運送事業者様も、お気軽にご相談ください。
関東全域の運送事業者様をサポートしています。
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