長距離輸送革命:フェリーとRORO船が切り開くモーダルシフトの未来

query_builder 2024/12/10
コラム
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モーダルシフトとは:その意義と背景

環境問題解決への一手としてのモーダルシフト


モーダルシフトとは、輸送手段をトラックなどの陸上輸送から鉄道や船舶などの環境負荷の少ない手段に切り替えることを指します。特に、中・長距離フェリーやRORO船を活用した船舶へのモーダルシフト推進は、近年注目されています。これは、CO2排出量の削減を通じて地球温暖化対策に寄与するだけでなく、大気汚染や騒音の低減といった多角的な環境問題の解決に向けた重要な施策です。

 たとえば、トラックによる長距離輸送は、燃料消費が多く、輸送距離が増えるごとに環境への負荷も大きくなります。一方で、フェリーやRORO船は一度に多くの貨物を積載でき、高効率で輸送が可能です。これにより、輸送業界が持続可能な形態へとシフトする助けになると考えられています。



輸送業の課題とモード間連携の重要性


 輸送業界は、長時間労働や労働力不足、さらにトラックドライバー不足といった深刻な問題を抱えています。特に、2024年問題と呼ばれる改正労働基準法の施行による時間外労働規制の強化により、これまで以上に効率的な輸送体制の構築が急務となっています。

 こうした背景において、モード間連携の重要性が高まっています。フェリーやRORO船を活用すれば、トラックドライバーはもっと短い距離の輸送に集中でき、労働負担を軽減することが可能です。また、モーダルシフトを通じて各輸送モードの特徴を活かすことで、全体的な輸送効率が向上し、輸送コスト削減にもつながることが期待されています。



日本国内の輸送事情とモーダルシフトの必要性


 日本は全国的に物流ネットワークが張り巡らされていますが、トラック輸送への依存度が非常に高い状況です。この結果、渋滞の増加や道路維持費の増大、そして環境負荷の拡大が問題視されています。一方、国内の中・長距離フェリーやRORO船には、積載率に余裕がある航路も多く、輸送の効率化とともにこれらの輸送力を十分活用する余地が残されています。



フェリーとRORO船の役割:中・長距離物流の革新

RORO船とは?その特徴と利点


 RORO船(Roll-on/Roll-off船)は、トラックやトレーラー専用の特殊な船舶です。この仕組みにより、トラックドライバーの労働負担を軽減するとともに、輸送時間を効率的に管理できます。また、RORO船は、鉄道や航空輸送と異なり、一度に大量の貨物を運べるため、輸送コスト削減にも寄与しています。

 さらに、トラック輸送に比べCO2排出量の低減が期待されており、環境負荷を大幅に減らすモーダルシフト推進の中核的存在とされています。たとえば、阪神から南中国への航路では、現在の積載率が60~65%とまだ余裕があり、さらなる活用の余地があります。これからの物流効率向上のために、RORO船の役割はますます重要になるでしょう。



フェリー輸送の歴史と進化


 フェリーは、長距離輸送において重要な役割を果たしてきました。日本でのフェリー輸送の始まりは1960年代に遡ります。当時は人の移動手段が中心でしたが、物流需要の増加に伴い、貨物輸送の割合が飛躍的に増えました。近年では、車両やコンテナごと貨物を輸送できる大型フェリーが導入され、多様なニーズに対応しています。

 モーダルシフトの観点からも、フェリー輸送は欠かせない存在です。特に、中・長距離フェリーはトラック輸送に比べ労働力不足を補う手段としても注目されています。また、積載率の向上に向けて国土交通省が主導して調査や政策を進める中、フェリーの利便性はさらに向上しつつあります。例えば、北東北から北海道への現在の航路では積載率が40~45%と低めですが、そうした未利用の輸送力を活用する余地が大きく、ますます活用が期待されています。



輸送コスト削減と効率の向上を実現する方法


 フェリーやRORO船の利用は、長距離輸送におけるコスト削減と効率化を図るうえで重要な鍵となります。まず、これらの船舶は一度に多くの貨物を運ぶことができるため、輸送あたりのコスト削減に直結します。さらに、トラック輸送と比べて低燃費であるため、燃料費の抑制や環境負荷軽減にもつながります。

 また、輸送時間の短縮や積載率の向上を実現するためには、船舶とトラック輸送の連携が重要となります。例えば、積荷のスムーズな積み降ろしを実現するためには、出港時刻や到着時刻に合わせた効率的なスケジュール調整が不可欠です。こうした効率的なモード間連携により、物流全体の最適化が図れます。

 具体的な実例としては、北関東や東北から北海道への航路での積載率が75~80%という高い利用状況が挙げられます。このように、適切な航路利用を推進すれば、余剰輸送力を活用しながらコスト削減を進めることが可能です。今後、積載率データの公表や政策的な支援を通じて、さらに効率的な輸送が実現することが期待されています。



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