一般貨物自動車運送業許可申請の流れと必要書類
コロナ禍でニーズが急増している運送業。今でも変わらず増え続けているニーズに対応すべく、運送業を始めようと考えている方は多くおられるのではないでしょうか。
今回は「一般貨物自動車運送業」を始めるために必要な書類や手続きなどについて解説します。
モレなくヌケなくしっかりと準備をしていきましょう。
運送事業許可の要件
一般貨物自動車運送業は、トラックなどの自動車を使って荷物を運ぶ事業です。軽自動車やバイクなどでは行うことができません。
また、事業を始めるにあたっては次の要件を満たす必要があります。
・最低6名の人員確保(運転者5名、運行管理者1名、整備担当者1名)※条件によって兼任可能
・最低5台以上の車両
・基準を満たした施設(車庫、休憩室、睡眠室など)
・自己資金(およそ600〜1200万円)※規模によって変わる
この要件を満たした上で、申請等を行なっていくことになるのです。
これらの条件について、詳しく解説します。
経営者としての条件
一般貨物自動車運送事業の経営者として、一定の条件が決められています。例えば、以前に一般貨物自動車運送事業の許可取り消しを受けているなど、一定の要件に当てはまる役員がいる場合には申請できません。また法令試験を合格しなければ、経営者として認められません。
なお、法令試験については不合格となった場合の再試験は1度だけ。チャンスは限られているためしっかりと準備して挑むようにしましょう。
運行管理者について
運行管理者とは、「運行管理者資格」を持っている人のことで、1営業所に1名以上が必要となります。運行管理者試験は年2回行われます。試験を受けるほか、5年以上の実務経験や講習などを受けるなどの方法がありますが、試験を受ける人がかなり多いようです。
運行管理資格を持っていなくても申請はできますが許可が下りても運輸開始できません。
整備担当者について
事業を始めるにあたっては、整備士や「整備管理者選任前研修」を修了した人員を確保しておく必要があります。整備管理者は、上記の研修と実務経験が必要です。そのほか、自動車整備士の資格を有している人でも可能です。
運転者の雇い入れについて
運転者は最低5名と表記しましたが、正確には“車両台数以上”の運転者(常時勤務)が必要となります。これについても、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」に決められたものがありますので、目を通しておくようにしてください。
営業所(休憩睡眠施設含む)の確保
営業を始めるにあたっては、運行管理を行うため、ドライバーの安全確保のために、休憩が取れる建物を用意しなければなりません。また、運行管理者の業務や様々な書類の保管などをする必要があるため、一定の広さや物品が置ける場所を用意するようにしましょう。
車庫(車両保管施設)の確保
車庫については、最低でもトラック5台分が入れられる場所が必要です。車庫の選び方については、「広さ」「場所」「前面道路の幅員」などいくつかのポイントがありますので、土地を探す際には「事業を始めること」「●台分のトラックを入れられる場所が必要」などの条件を整理して探すようにしましょう。
規定以上のトラック確保
事業許可の要件として、5台以上のトラックを用意する必要があります。事業規模によりますが、1営業所で5台以上を用意することが必要です。
必要資金の確保と証明 事業開始の要件にある通り、自己資金を用意していることの証明が必要となります。証明する書類や方法等については、行政書士にご相談ください。
必要書類について
事業開始の申請については、様々な書類が必要になります。法人や個人によって細かな内容は変わりますが、今回は法人として行う場合の書類について解説します。
なお、書類の様式は決まっているものが多いですので、それぞれの運輸局にお問合せください。
会社の登記簿謄本
会社の登記簿謄本については、「履歴事項全部証明書」を用意しましょう。なお、申請日までの3ヶ月以内に取得するようにしてください。
会社定款の写し
これは、必ず最新のものを用意してください。提出前に、定款が古い状態のままになっていないかを確認しておきましょう。
残高証明書(2回提出必要あり)
残高証明書は、主に金融機関で取得することになります。これについては、申請受付時と約2ヶ月後の計2回、提出を求められます。指定された期間内の証明書を取得する必要があるため、一度に2枚用意するのではなく、その都度用意するようにしましょう。
決算書の写し(新規の場合は期首の貸借対照表)
直近の貸借対照表や損益計算書などを用意してください。新規事業として法人を立ち上げた場合にはその旨を伝え、必要な書類を揃えるようにしてください。
役員全員の履歴書
申請当時の最新のものを、全員分用意して提出しましょう。
車検証の写し
用意した車両、全てのものを用意してください。
営業所・車庫の平面図及び配置図
営業所や車庫は広さなど細かな規定が決まっています。必要な設備があるかどうかも含めてしっかりと確認して書類を用意しましょう。
営業所・車庫に関する土地建物の登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
土地建物の登記簿謄本、賃貸借契約書も必須です。抜け漏れがないよう気をつけて準備しましょう。
車庫前面道路の幅員証明書
こちらについても細かく規定されています。条件に抵触していないことを証明するために必要です。ただし、前面が国道の場合は不要となることがあります。詳しくは行政書士等にご確認ください。
運行管理者の合格証の写し
運行管理者は1営業所に必ず1人は必要です。また、運行管理者は国家資格のため、合格証もしっかり発行されています。勤務する運行管理者の合格証は確実に用意しましょう。
整備管理者の履歴書及び資格者手帳の写し
整備管理者についても、運行管理者と同じです。整備士の資格証や研修の修了証などを用意しておきましょう。
営業所・休憩または睡眠室・車庫の写真
図面や平面図を用意している設備等の写真も用意する必要があります。必要なところについては撮影しておきましょう。普段、運転するスタッフさんが使っている状態を撮影しておくようにしましょう。
社会保険(健康保険・雇用保険・厚生年金・労災保険)に加入している証明書類
社会保険についても加入を証明する書類が必要です。問題なく提出できるよう準備しておきましょう。
運転免許証の写し(運転者)
運転者全員の免許証をコピーしておきましょう。万が一、期限が切れていたり更新していなかったりしては大変なことになります。
会社として健全に業務を行うため、そういったところの管理をするという意味でも、取っておいて損はありません。
手続の流れ
ここまで、許可申請のための要件や必要書類について解説しました。ここからは、許可を得るまでの流れについて解説します。
許可要件の確認
上記で解説した、許可要件を確認しましょう。どれが抜けていても許可申請ができませんので注意してください。
経営許可申請
自社がある地域を管轄する運輸支局に許可申請を提出します。
法令試験の受験及び運輸局の審査
試験は役員が受ける必要があります。また、運輸局からヒアリングを受ける可能性があるため、準備しておきましょう。
許可
申請書類に問題なく、試験に合格すると許可が出ます。許可が出たら全てOKというわけではありませんので、注意が必要です。
なお、許可が出るまでに残高証明書の提出が求められます。2回目の提出となりますので、指定された期間内で残高証明書を取得します。
運送事業許可証交付式と登録免許税納付
交付式では、法令や許可取得後の流れなどについての説明があります。必ず参加するようにしましょう。また、法令関係の話があるため、役員と運行管理者が参加することが望ましいとされています。
なお、登録免許税は12万円です。許可取得から1ヶ月以内に収めるようにしてください。
運輸開始前の確認・自動車の登録
運輸開始前には、いろいろな書類の提出が必要です。また、運送業に使う車両は「緑ナンバー」が必要になります。ナンバープレート変更し、新たな車検証を取得しましょう。なお、すでに緑ナンバーの車両の場合には車検証の変更のみで問題ありません。
また、自動車保険の加入(任意保険)も忘れないようにしてください。
運輸開始届出・運賃料金設定届出
緑ナンバーに変更して車検証も変わったら、運輸開始届けを提出します。その際、車検証と自動車任意保険の保険証コピーの添付を忘れないようにしましょう。このタイミングで、運賃料金設定届けを提出すれば、完了です。
まとめ
今回は、「一般貨物自動車運送事業」の許可申請について解説しました。必要な書類が多かったり手続きに時間がかかったりと大変ですが、確実に準備しましょう。
一人での準備には時間や労力がかなり必要となります。行政書士はこういった書類等の手続きに関してのプロですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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