業務内容別に見る最適な選び方
起業準備や相続手続き、建設業許可申請など、人生や事業における重要な局面では、法的手続きをスムーズに進めるために士業のサポートが欠かせません。ただし、行政書士・税理士のどちらに相談すべきかは目的によって異なり、間違えると手続きが遅れたり費用が無駄になる可能性もあるため、選定には十分な注意が必要です。
たとえば、会社を設立する際には、まず定款の作成・認証が必要となります。この定款作成業務は行政書士の専門分野です。一方で、設立後の法人税申告や顧問契約などの税務処理は税理士の管轄となります。このように、同じ「会社設立」という目的でも、行政書士と税理士で関与する場面が異なるのです。
相続に関しても同様です。相続人の調査や遺産分割協議書の作成などの文書作成や行政手続きは行政書士が対応し、相続税の申告や評価計算は税理士が担当します。相続案件では税額が大きくなる傾向があるため、税理士の介入は早めにしておくことが望ましいですが、相続登記の補助や遺産分割協議書の作成といった準備段階では行政書士の支援が非常に有効です。
さらに、建設業の許可を取得する場合には、要件確認・書類作成・提出代理を行政書士が担当し、建設業を営む法人の会計処理や決算業務は税理士が受け持ちます。行政書士は、国や自治体に対する各種許認可申請の専門家であり、公共事業を目指す企業には欠かせない存在です。
目的別に必要な士業一覧
目的 |
主に相談すべき士業 |
主な支援内容 |
会社設立 |
行政書士+税理士 |
定款作成、登記関連書類、設立後の税務 |
相続 |
行政書士+税理士 |
遺産分割協議書、相続税申告 |
許認可申請(建設業等) |
行政書士 |
必要書類作成、代理申請 |
税務顧問契約 |
税理士 |
節税提案、申告業務、税務調査対応 |
遺言書作成・成年後見制度の活用 |
行政書士 |
公正証書遺言の作成支援、申立書作成 |
このように、目的に応じて行政書士・税理士を適切に選定することが、手続きをスムーズに進めるカギとなります。特に起業や相続など複合的な手続きが必要な場面では、ダブルライセンス事務所や士業連携体制が整った事務所を選ぶことで、無駄な手間や費用を省くことが可能です。
対応範囲・実績の徹底比較
行政書士と税理士の違いを理解した上で、実際に相談する事務所を選ぶには、「対応範囲」と「実績」を見極めることが重要です。どちらの士業も同じ「士業」として括られるものの、対応できる業務領域や専門性には大きな違いがあります。以下の比較表をご覧いただければ、その違いがより明確になります。
行政書士と税理士の対応領域・スピード比較
比較項目 |
行政書士 |
税理士 |
対応分野 |
許認可申請、遺言書、相続協議書、公的文書作成 |
会計、決算、税務申告、節税対策 |
手続き対応スピード |
書類作成中心で比較的迅速(3~7日) |
内容確認・税務分析が必要なためやや時間を要する(7~14日) |
顧問契約の有無 |
単発契約が多い |
継続的な顧問契約が一般的 |
官公署との交渉代行 |
可 |
原則不可(税務署等への提出代行は可能) |
対象顧客層 |
起業家・建設業者・高齢者・相続人など幅広い |
中小企業経営者・フリーランス・個人事業主など |
実績面では、対応件数・業歴・資格保持者数・得意分野の明記などが信頼性を判断する指標となります。例えば「建設業許可取得実績500件以上」「相続相談年間300件超」など、数値で示された実績を確認することが大切です。
また、業務範囲が広い事務所でも、「専門特化型」と「総合対応型」のどちらかでスタイルが分かれます。許認可に特化している行政書士事務所、法人税申告を中心とする税理士事務所など、それぞれの特徴を見極めることが必要です。